すこし前までの私はおろかなことに、この卵焼きの作り方を軽く見ていた。
何十回と作ってはきたが、十分に考えていなかったと言っていい。
卵焼き用のフライパンで、だしを入れた溶き卵を何度かに分けて入れ、焼く。
くるっと巻いたら、ラップを引いたまな板に載せ、包んですこし休ませながら形を整える。
平日の朝のキッチンで、ほぼ無意識でできるくらいにはなっていて
だから味なんてそうそう変わるものではない、と高をくくっていたのかもしれない。
でも、そうじゃなかった。
卵焼きの味は作り方でまったく変わってしまうのである。
私は単に、やり方を知らないだけだったのだ。
おいしい卵焼きの作り方がわかった今から考えると、
以前の卵焼きの味になぜ自分が疑問を持たなかったのか不思議なくらいだ。
ただ、妻のほうでは私の作る以前の卵焼きに満足してはいなかったようだ。
後になって、以前の卵焼きには改善の余地があると感じていたことを打ち明けてくれた。
だから最近の卵焼きがおいしくなって、妻は大いに喜んでくれている。
妻の実家の近くに引っ越してから少しして、平日の朝私が作っているお弁当を
よりヘルシー仕様にして、両親にも食べてもらおうというアイデアが持ち上がった。
最近はお昼をちゃんと作って食べるのがおっくうだ、と妻のお母さんが話していると聞いて、
二人分を作るのも四人分を作るのも手間はそう変わらないんじゃないか、と私が思いついた。
ある日のお弁当4人分 |
妻の両親の予定を事前に聞いておき、家で昼ごはんを食べられる日を確認する。
OKな日の朝、私が四人分のお弁当を作り、お昼どきに妻が両親の家まで持っていく。
そんな簡単な段取りだけを決めてやってみることにした。
妻が私の卵焼きの味を改良するきっかけを作ってくれたのはそのときだった。
前日の夜、メニューを話し合っているときに妻が言った。
――卵焼きのことだけど、ママはしっかりとだしが効いた味付けのほうが好きかも。
そういえば妻の実家で食べるごはんは、しっかりした味付けだと気づいた。
しかし両親の健康の観点から、塩分を多く使うのはできるかぎり避けたい。
そこで、前日の夜からだしをしっかり取って、たっぷりのだしを使うやり方で作ってみた。
これまで何となく作っていたときのだしの量の、実に4倍である。
これが成功だった。
はじめてわかったのは、たっぷりだしを入れると、フライパンの上で卵をまとめるのがむずかしい。
だが、すこしの葛を溶かし入れることで、まとまりやすくなることがわかった。これもコツである。
今では妻のお母さんが、最近料理の腕が上がったんじゃない? と言ってくれるまでになった。
たっぷりのだし巻き卵がおいしく作れるようになると、いいことがふたつある。
1.ランチの楽しみが倍増する
お弁当を食べるあいだ、メインのおかずを食べてしまっても、まだおいしい卵焼きがある、と思える。
ささやかだが混じりけのない、幸せの瞬間である。
仕事でバタバタしていても、お弁当には真剣に向き合って、味わいながら食べたい。
そんな考え方にもつながってくる。
2.週末はだし巻き卵をサンドイッチにすると楽しい
おいしいだし巻き卵は、平日のお弁当のおかずだけにしておくのがもったいない。
週末はサンドイッチにしてみよう。
卵焼きは同じ材料で、お弁当のように棒状ではなく正方形に焼く。
おいしいだし巻き卵は、平日のお弁当のおかずだけにしておくのがもったいない。
週末はサンドイッチにしてみよう。
卵焼きは同じ材料で、お弁当のように棒状ではなく正方形に焼く。
辛子マヨネーズをぬったトーストにはさんで食べれば、 まったく違った味わいが楽しめる。
それではだし巻き卵とそのサンドイッチ、2つ続けてレシピを記します。
格別おいしいだし巻き卵の作り方
■材料(お弁当4つのおかず分)
卵…2個
だし…60ml
葛粉…小さじ2/5
しょう油…小さじ1と1/5
サラダ油…適宜
■作り方
1.卵を常温に戻して溶き混ぜる。
2.だし(後述)に葛粉を加え、手でもむように混ぜて溶かす。1の卵にしょう油ともに加えてよく混ぜる。
3.卵焼き用フライパンを熱してキッチンペーパーでサラダ油をひく。
4.卵液の1/3を流し入れ、中火よりやや弱火で火を通す。半熟になったら箸で奥側にくるくる巻く。
5.フライパンのあいた面にキッチンペーパーで油をひき、 卵をすべらせて手前に寄せる。
6.フライパンのあいた面にキッチンペーパーで再度油をひき、1/3の卵液を流し入れる。
7.半熟になったら再度奥側にくるくる巻き、あいた面に油を引いて手前に寄せる。
8.あいた面に油を引き、残り1/3の卵液を流し入れる。
9.ひと巻きして表面をきれいに焼き上げる。
10.ラップでくるんでから、巻きすで巻いてしばらく置く。粗熱がとれたら4つに切る。
だし
■材料(600ml分)
昆布…10g
かつお節…10-20g
水…600ml
■作り方
1.昆布を固く絞ったぬれぶきんやキッチンペーパーで拭き、水に一晩つける。夏は冷蔵庫へ。
2.昆布を除いて火にかける。煮立ちかけたらかつお節を加え、数秒強火にして火を止める。
3.あくをすくって、キッチンペーパーなどでこす。
だし巻き卵サンドイッチの作り方
■材料(2人分)
卵…2個
だし…60ml
葛粉…小さじ2/5
しょう油…小さじ1と1/5
サラダ油…適宜
パン…6枚切もしくは8枚切2枚
マヨネーズ…大さじ1
あらびきマスタード(和辛子でも可)…小さじ1
■作り方
1.卵を常温に戻して溶き混ぜる。
2.だしに葛粉を加え、手でもむように混ぜて溶かす。1の卵にしょう油ともに加えてよく混ぜる。
3.卵焼き用フライパンを熱してキッチンペーパーでサラダ油をひく。
※ウチで使っている卵用のフライパンは縦に長いので、卵が正方形に焼けるように硬めの紙で即席のしきりを作る。
4.ごく弱火でじっくり焼き上げて、皿に載せておく。
5.マヨネーズとあらびきマスタードを混ぜる。味見しながら好みの味に整える。
6.トーストしたパン2枚の片面に塗る。
7.だし巻き卵をはさみ、ラップでくるんでしばらく休ませる。
参考にしたレシピ本はこちら。
野崎洋光、村田吉弘、川原渉、後藤紘一良ほか『永久保存レシピ 一流料理長の 和食宝典 ―私たちへ300レシピの贈り物』
それではだし巻き卵とそのサンドイッチ、2つ続けてレシピを記します。
■材料(お弁当4つのおかず分)
卵…2個
だし…60ml
葛粉…小さじ2/5
しょう油…小さじ1と1/5
サラダ油…適宜
■作り方
1.卵を常温に戻して溶き混ぜる。
2.だし(後述)に葛粉を加え、手でもむように混ぜて溶かす。1の卵にしょう油ともに加えてよく混ぜる。
3.卵焼き用フライパンを熱してキッチンペーパーでサラダ油をひく。
4.卵液の1/3を流し入れ、中火よりやや弱火で火を通す。半熟になったら箸で奥側にくるくる巻く。
5.フライパンのあいた面にキッチンペーパーで油をひき、 卵をすべらせて手前に寄せる。
6.フライパンのあいた面にキッチンペーパーで再度油をひき、1/3の卵液を流し入れる。
7.半熟になったら再度奥側にくるくる巻き、あいた面に油を引いて手前に寄せる。
8.あいた面に油を引き、残り1/3の卵液を流し入れる。
9.ひと巻きして表面をきれいに焼き上げる。
10.ラップでくるんでから、巻きすで巻いてしばらく置く。粗熱がとれたら4つに切る。
だし
■材料(600ml分)
昆布…10g
かつお節…10-20g
水…600ml
■作り方
1.昆布を固く絞ったぬれぶきんやキッチンペーパーで拭き、水に一晩つける。夏は冷蔵庫へ。
2.昆布を除いて火にかける。煮立ちかけたらかつお節を加え、数秒強火にして火を止める。
3.あくをすくって、キッチンペーパーなどでこす。
だし巻き卵のサンドイッチ |
だし巻き卵サンドイッチの作り方
■材料(2人分)
卵…2個
だし…60ml
葛粉…小さじ2/5
しょう油…小さじ1と1/5
サラダ油…適宜
パン…6枚切もしくは8枚切2枚
マヨネーズ…大さじ1
あらびきマスタード(和辛子でも可)…小さじ1
■作り方
1.卵を常温に戻して溶き混ぜる。
2.だしに葛粉を加え、手でもむように混ぜて溶かす。1の卵にしょう油ともに加えてよく混ぜる。
3.卵焼き用フライパンを熱してキッチンペーパーでサラダ油をひく。
※ウチで使っている卵用のフライパンは縦に長いので、卵が正方形に焼けるように硬めの紙で即席のしきりを作る。
4.ごく弱火でじっくり焼き上げて、皿に載せておく。
5.マヨネーズとあらびきマスタードを混ぜる。味見しながら好みの味に整える。
6.トーストしたパン2枚の片面に塗る。
7.だし巻き卵をはさみ、ラップでくるんでしばらく休ませる。
参考にしたレシピ本はこちら。
野崎洋光、村田吉弘、川原渉、後藤紘一良ほか『永久保存レシピ 一流料理長の 和食宝典 ―私たちへ300レシピの贈り物』
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